さて、今日は医学部事情、特に解剖実習についての話です。
解剖実習とは何ぞや
医学部では、解剖実習があるのです!(歯学部でもある。)
解剖実習では、御献体に方の体を実際に切らせてもらいます。
ヒトの体を切るのです。想像できますか?
御献体はもちろん、お亡くなりになられた方ですが、そのお体で勉強させてもらうわけです。
まだ想像できないかもしれませんが、実際に人を切るわけです。
考えられませんよね・・・・
医学生も初日はめちゃくちゃ緊張しています。学校、学年によっては途中で泣き出しちゃう人、立っていられなくなる人が出てくるらしいです。
解剖実習前のガイダンスで「気持ち悪くなった人はムリをしないように・・・」と言われます。それくらい、最初はストレスフルなのです。
解剖実習は大変
まずいっときます。解剖実習は大変です。
本当に大変。
まず実習中は立ちっぱなしになることが多いです。
見たい体の部位・構造を探すために、授業が終わってからも実習室に残らなければならない時もあります。(あくまで僕の場合ですが)
実習は非常に大変なので、僕自身は、実習に対する態度の変化がありました。授業が始まったばかりの頃は、しっかり予習をして授業に挑んでいましたが、授業が進むにつれて
- 実習で帰りが遅く復習と予習ができない
- ⇒次の日の授業があいまいなまますすむ
- ⇒実習で遅れを取り戻そうとして帰りが遅くなる
- ⇒帰りが遅くなり・・・・
との悪循環もありました。
人の体を切ることへの精神的プレッシャーも気付かないうちにあったかもしれません。
解剖実習最終日は、実習から解放されることがうれしかったです。(今はなぜ嬉しかったのかわからない・・・)
毎日の実習が次第に負担に感じたとき、
- 「わざわざ実習を行わなければならないのか?」
- 「座学のみではいけないのか?」
と思うようになったこともあります。
なんで、わざわざ体を使わせてもらう?
座学でもどうにかなる!?
「どうして、わざわざ解剖学実習をやるのか?」
意味がわからないですよね。
生きていた人の体を切る行為にどこまでの意味があるのか!?
最初、僕は正直やりたくなかった。
怖かったです。
今や、解剖に関しては、アプリや書籍で立体的に学習することができます。
特にアプリ等を用いれば、見たい筋肉だけを抽出してみたり、どういう風に筋肉が動くかなども、一瞬でわかります。すごくわかりやすいです

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解剖は座学のみでは学べない
でも、実際に解剖をやってみて解剖実習はあってよかったと思っています。
座学より定着が速い
百聞は一見にしかずとは言いますが、本で見るのと、実際に見るのでは、全然違います。
解剖実習で見た構造はすぐに覚えられます。
解剖実習中見つけた構造などは、座学で復習していても、ありありと目に浮かびます。
座学では学べない
また、座学のみでは、得られない知識をも解剖実習では学ぶことができます。
例えば一見ただの作業にも感じられる「皮膚の皮はぎ」から、「体の皮膚の厚さの違い」を学ぶことができました。同様に「体の組織から脂肪を除去する」という行為から、「体のどこに脂肪がつきやすいか」等を学ぶことができました。
そして、実習を終えた今、「なぜそこの皮膚は厚かったのか?」「脂肪は多かったのか?」などと考えることができました。
このような学習は、座学やタブレット端末ではなかなか学習することができません。
以上のような、解剖実習によって得られる経験のありがたみを、解剖実習中に感じることは、なかなか難しいです。
実習そのものは大変でありますし、このような経験というものは口だけでは伝えられないところも多いからです。
今、解剖実習に対して思うこと(後輩へ)
解剖実習は非常に貴重な経験です。
筋肉をはいだり、腱を切ったり、これからの人生でなかなかできない経験をします。
上にも述べましたが実習中は実習がおっくうに感じます。
- 早く帰りたい
- つらい
- 寝たい
などと感じる機会は多々あると思います。
でも、解剖で手を抜くと後悔します。
寝ることはいつでもできます。解剖実習は、2年生の1度だけしかできません。
確かに、実習期間中は「実習、早く終われ!!!」と思います。
でも、実習が終わった時、どこか、心残りがうまれます。
- 本当に、自分は御献体の方の体を使わせてもらって、勉強しきったのか?
- 御献体に協力してくださっている方々に、失礼な学びの態度ではなかったか?
皆、そういう反省を内心でしていたと聞きます。
それだけ、皆、一度はだれてしまいやすい科目でもあります。
解剖への熱心さが途切れる一瞬は、ほとんどの医学生に訪れると思います。
ですが、この文章を読んだ方は、ぜひ踏みとどまってほしいです。
他の科目で再試に引っかかっても、解剖実習だけは徹頭徹尾、真剣に取り組んでほしい。
今はそう思います。
確かに解剖実習はつらいです。
しかし僕は、できれば、もう一度、解剖をしっかりやり直したいと後悔しています。
世の中で、チャンスというものは確実にものにしないといけないようです。
最後に
御献体と、御献体に深い理解を示してくださったご家族の方々へ、深い感謝の気持ちを持ちながら、今後とも医学を学ばせてもらおうと思います。