病院実習は一般的に「だるい」ものである

「病院実習は一般的にだるいものである。」というのが多くの医学部生に共通する認識でしょう。 実際、実習をしていた僕の周り(友人など医学部生)でも、「やっと実習終わった。本当につらい。」「実習は心を無にしてひたすら耐える時間」と考える人が多いです。
臨床現場で働く医者たちでも、「実習ってよくわかんないし大変だよな」「実習大変だし、色々疲れるよな。今日は帰って休んでいいよ。」という人も多いです。
5年次は「ポリクリ(病棟実習)でいろいろな診療科をローテーションするのがストレスだった」など、病院実習の苦労を挙げる人が目立つ。また、実習そのものの大変さに加え、「看護師さんや教授に気を遣うのが大変だった」など、対人関係の苦労を挙げる人も少なくない。
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ただ、これは非常に「もったいない」でしょう。医学部臨床実習は1年間かけて行う実習です。この時間が「きつい」「だるい」時間、無駄な時間になってしまうのは、非常にもったいないでしょう。
折角、実習期間があるなら、この時間を有意義にしたい。それが多くの医学部生の深いところでの思い・感情ではないでしょうか。
臨床実習を有意義にする「態度」についてはこちらの記事で紹介しています。(→(実習開始前必見)医学部生が臨床実習時に持つべき・気をつけるべき態度(あいさつ))
医学部の実習がなぜ退屈か
「有意義な時間を過ごす」ためには、「なぜ今、実習が有意義に感じないか。」の問題をあぶりだすことが重要です。簡単に上げられるものとしては以下のものがあります。
- 医者が何やっているかよく分からない。(学生の知識不足。また、医師側の説明不足・教育への不熱心さもある。教育をいくらしようと、医者側には即効性のあるメリットは少なく教育に熱を入れる先生も多くはない。)
- 立ちっぱなしなど慣れない環境(学生が手術に入ると、立ちっぱなしになることが多い。しかも、学生であるがゆえに、何もできない・やらせてもらえないこともある。ひたすらに立つのは苦痛である。)
主な原因としては、上の知識不足でしょう。正直、「医学部4年生までに机で学習していた内容」と「臨床現場での知識」には乖離があります。そこには以下の理由があります。
- 実臨床の場では即決が重要なことが多い。知識を「えーっと」と思い出す時間がない。一瞬で判断しなければいけないし、そのためには知識の定着が不可欠である。ただ、その知識の定着はかなりレベルが高い。
- 手術などの講義が少ない。特に、手術などについて国家試験に出ることはないし、4年生までの授業でもあまり扱わない。各医師、「授業で手術の講義などは無意味。そういう知識は現場で見ればよい。」と思っていることが多い。(実際そうであるとも思う。)そのため、学生は、手術の知識がほとんどないままに、臨床現場(実習)に放り込まれる。
(逆に、手技を学ぶことが、実習の醍醐味でもあるが。医師が丁寧に教えてくれないと、正直よくわからない。「習うより慣れろ」を実践するほどの時間はない。)
つまり、「知識を定着させて実習に臨むこと」と、「手術などの知識を頭に入れて参加すること」が実習を充実焦るために必要なことになります。
各課題について解決するためには
知識の定着は個人で頑張るしかない
知識の定着は、個人の、個々の問題ですから、自分でやるしかないでしょう。今では映像講座などを皆とっていると思いますから、実習が始まる前に、一通り、講座に目を通しておくことをお勧めします。(実習前の土日などに講座を見ましょう。今実習で回っている科の次の科の講義を、早めに見ておきましょう。)
特に内科系の実習では、あらかじめ映像講義を受けておくことで、実習が実りある物になることが多いです。
手術本を図書館で借りよう
「手術に関する知識不足」は仕方がないものがあります。医者もなかなか教えてくれる時間はありません。そこは本で補いましょう。「手術本」を図書館で借りるのです。(自費で買うと一冊2万円くらいするし、各科で買うのは金銭的に厳しい。金の無駄。)
図書館で借りて、手術室には、その本と解剖書などを持ち込みます。
- 手術中に、術野に見えるものは何か。(手術の本と解剖書を組み合わせて手術を見る。)
- 術野には見えないけど、術野の裏に存在するものは何か。(体は立体的なものである。今見える構造の下に何があるかを考える。解剖書を使うとよい。今の時代はiPadも有効である。)
- 手術中に気を付けなければいけないことは何か。(ここを切りすぎると神経を傷つける、などと、自分で考えながら見る。)
そもそも、我々医学生の解剖の知識なんて、2年時の「解剖学」以降、ほとんど進化していません。この知識をアップデートさせていきましょう。臨床的に重要な構造。メルクマールを意識し、解剖書を覗くと、解剖学的な暗鬼がすんなりと、上手くいきます。
自分が術野に入る手術については、「自分がこれから何を行うのか」「どんな構造が見えるはずか」などを予め、さっと(10分でも)勉強してから手術に立ち会うと、見える世界が違います。
内科系で知識の定着が重要・外科系では直前の予習が重要
内科系では、知識の定着が重要です。いろんな病態を見て、カルテを書いて、SOAPを意識して、鑑別疾患を考えて・・・・としていきます。
外科系では、手術直前での、知識の予習(手術方式や解剖学的構造の予習)が重要です。実際に手術を見て、わからないことも多いと思います。(この構造は何?今何してるの?)教育熱心な先生には積極的に質問してみましょう。個人的には、外科系は、映像講座などでは学べない知識をたくさん学ぶことができました。「文字にならない、匠が知る知識」は手術現場で教えてもらうこともあります。積極的に予習していきましょう。(学生が熱心と知るや否や、丁寧に指導してくれる先生もいます。)
各科おすすめの参考書
(現在、友人らと議論中です。一番良いと思った本を逐一上げていきます。)
カルテの書き方
カルテの書き方については、各科で書き方やルールが微妙に違ってくることもあります。そのため、逐一、先生に聞くとよいと思います。ただ、原則は変わらないでしょう。そのための本として「「型」が身につくカルテの書き方」がおすすめです。
外科
外科系一般については「研修医のための見える・わかる外科手術〜「どんな手術? 何をするの?」 基本と手順がイラスト300点でイメージできる 」という本が良かったです。休めではあるので自費での購入も可能です。多くの手術について書いてあるので、サッと読むことに適しています。簡単に持ち運べますし、1冊くらい買ってもよいかなとも思います。
脳神経外科
脳神経外科については「新脳神経外科手術のための解剖学」がおすすめです。脳神経外科の開頭・体位や、そのときの注意点などについて書いてあります。かなり高価ですがイラストが多くわかりやすいです。ただ、高額です。先生からは「脳外科目指すなら、この本は良いけど、そうじゃないなら高すぎる」らしいです。
精神科
僕は精神科志望で、精神科勉強用の書籍は多く知っています。詳しくはそちら(医学部生が推薦する精神科疾患・病院・病床を扱った書籍(教科書・新書・漫画))を参考にしてください。
精神科にあまり興味が無い学生は「精神疾患にかかわる人が最初に読む本」をおすすめします。精神科の用語はたくさんあり、混乱しますが、その用語についてかなり分かりやすく書いてあります。