医学部事情

海外の医学部に進学するのは悪手!日本の医学部に進学せずに医者になる?

以前こんな記事を見かけました。

「日本の医学部に進学しないで医者になる方法がある!(この方法はお勧めである!日本の医学部に進学するよりこっちのほうが良いくらいだ!)」

この記事のリンクを貼りたくないくらいに、「ふざけるな」と思いました。

なぜか?今回は「海外の医学部に進学すること」の是非を考えましょう。

日本の医学部に進学しないで医者になる方法がある!

「日本の医学部に進学しないで医者になる方法」はあります。

海外の(特定の)医学部に進学して、卒業後、日本の国家試験を受ければ、日本の大学の医学部に進学しなくても、日本で医者になることはできます。

「海外の(特定の)医学部」の難易度は日本の医学部ほどではないので、「簡単に医師になる方法がある」などと宣伝されています。(一時期?今でも?)「簡単に医者になる方法」として、「海外の医学部進学」は「小さなブーム?(ただの宣伝?)」にもなっています。

「ラクに医師になるために」海外の医学部に進学する?馬鹿か

ここから上から目線で僕の意見を書いていきましょう。「ラクに医師になるために海外の医学部に進学する」のはバカです。(上から目線におつきあいください。)

ラクして医者になれるのか?

確かに、海外の医学部は日本の医学部より、入試の合格難易度が低かったりもする。それは事実である。だからといって、海外の医学部に進学すれば「ラクして医者になれるのか?」といえば、答えは、否、である。

確かに、進学はしやすい。ただ、進学がしやすいからといって、

  • 進級しやすいか
  • 卒業しやすいか

までは分からない。

「医学部合格(進学)」のネームバリューが欲しいのならば、難易度の低い海外の医学部に進学すればよろしい。ただ、「医者になりたい」のならば、海外の医学部に進学するのは遠回りである。

海外の医学部で簡単には進級できない

まず、海外の医学部では、簡単に進級できない。

日本の医学部でも、3人に1人は留年する。日本の医学部生は、日本語の授業を受けて、日本語の試験を受けても、尚、医学に対する理解が追いつかず、もしくは長時間の勉強に耐えられず、留年する。そのうちの何人かは退学・放校となる。

況や海外の医学部をや。

海外の医学部に行くと

  • 医学を英語で学ばなければいけない(英語で医学をすいすい学べるほどの英語力があるなら、そもそも日本の大学入試で苦労して無いであろう。積極的理由で海外の医学部に行くならばよいが、「入試難易度が低いから」などといった消極的理由で海外の医学部に行っても失敗しか見えない。)
  • 海外で暮らすため、文化的差を感じる(あなたが帰国子女でもない限り、日常生活でもストレスを抱えることになる。ただでさえ勉強でストレスを感じるのに。)

このようなハンディキャップがあるのに、簡単に医学部で進級していくことができるとは到底思えないでしょう。

卒業しても日本で医師になることができるかは疑問

もしあなたが、類まれなる英語の力を持っていて、卒業までたどりついたとしよう。

ここからが問題である。あなたは、日本で医師になりたいのならば、「日本の」医師国家試験を合格しなければならない。

あなたはこれまで「英語で」医学を学んでいる。改めて、「日本語で」医学を学ばなければならない。公衆衛生学・医療統計的分野では、日本の国家試験では、(日本における法律など)日本独自の問題が出てくる。微生物学的問題も同様である。「日本でよく見られる」病気が、日本の試験問題では出てくる。

英語で勉強を続けてきて、海外の文化で6年間育ったあなたに、日本の国家試験は解けるだろうか?

日本で医師になるとすれば、日本の医学部にいる場合より、海外の医学部に進級したほうが、遥かに多くの量を勉強せねばならない。それなら日本の大学で学ぶ方がはるかに楽でコスパよくいける。なぜわざわざ、海外の医学部に行き、リスクを犯し、奇跡を信じなければならないのだろうか?

(あくまで、積極的理由、つまり、「海外で医学を学びたい」と思って海外の医学部に進学するならばよいが、「進学が楽だから」という消極的理由で海外の医学部に進学しても、困難しかないという事である。)

日本に医師として帰国しても大変

もし、あなたが全ての困難を乗り越えて、日本で医師になるとしよう。

さて、どこで働く?

あなたは日本の病院のどこが、どんな状態か、どこに行けば自分の学びたいことが学べるか分からない。どうすれば医師としてキャリアアップしていけるか、自力でその方法を見つけなければならない。

大変である。

www.medudent.com

こちらの記事でも、ちょこっと書いたように、医学部は情報が命。

先人たち(先輩など)がほとんどいない医学部を卒業しても、道は困難である。

結論

簡単に「海外の医学部に進学すればよいのだ!」などと言うべきではない。

そのような言葉を言う人は

  • ウラがある人(たぶんこれが多数)
  • 目先のことしか分からない人(多分これもそこそこいる)
  • 医学部に入ればそれでよいと思っている人(大学は簡単に進級できて、簡単に卒業できると思っている人)
  • 日本の医師国家試験が簡単だと思ってなめてる人

くらいである。

信用するべきではない。