医学生向け

均一化される医学部生には勉強以外の特技が必須?医学生のアイデンティティ問題

均一化されていく医学部生

冒頭にはっきりと明言しましょう。「医学部の学生は均一化されている」と。その理由には以下があります。

  • 医学部は6年間で長い
  • 同じ環境を皆で過ごす
  • 同じレベルの試験を受ける(CBT/OSCE/国家試験)
  • 皆が目指す目標が大体、「医師」で統一されている
  • 入学は難しく、学生の学力が低すぎることはない
  • 皆が同じ授業を受ける(映像授業)

これらの理由により、「医学部生は均一化されている」のです。それぞれの理由について、詳細を書いていきます。

医学部は6年間で長い・同じ環境を皆で過ごす

医学部の学生生活は6年間と長いです。しかも、その6年間を、みんな同じように過ごします。どういうことかと言いますと、

  • 医学部の部活」に所属するなど、課外活動も一致
  • 医学部の授業はほとんど自分で選択することはない。みんながみんな同じような授業を受ける。平日は毎日朝から晩まで一緒

このようにして、6年間を四六時中一緒に過ごすわけです。同じ環境にいれば、「同じような」学生が育つのは当たり前です。

同じレベルの試験を受ける(CBT/OSCE/国家試験)

全国の医学部生は、皆、 CBT/OSCE/国家試験 といった試験を受けます。この試験のために、全国の医学部生皆が、似たような対策を取ります。似たような勉強法で(多少の多様性はりつつも、パターン化すれば数種類になるだろう)試験対策をするため、「似たような医療知識水準」を持った医学部生が登場することになります。

皆が目指す目標が大体、「医師」で統一されている

医学部生の将来の夢は、大抵「医師」です。それ以外の目標を持つ人は、ごくごく少数です。

同じような目標目指して、皆が大学生活を過ごしていくわけですから、同じような生活様式になったり、同じような努力を重ねるため、似たような医学部生がたくさん出てくるわけです。

入学は難しく、学生の学力が低すぎることはない

「入学試験」も医学部生の均質化に寄与しています。

例えば、だれもが入学できる入試であれば、その大学の中は、多様性にあふれるかもしれませんが、医学部入試は、一般的には難関です。その難関な試験をクリアしてきた人たちは、ある程度の学力・学習能力は担保されます。

そのため、多少の勉強の出来不出来はありつつも、みんな、ある程度は勉強できます。そのため、似たような医学部生が育ちやすいのです。

皆が同じ授業を受ける(映像授業)

先ほど書いた、「CBT/OSCE/国家試験」の対策用に、医学部生向けの予備校があります。(有名どころだと、最近だと、MEC/TECOM/medic media/medu4・・などの会社。寡占状態ともいえる。)多くの医学部生は、これらの、予備校の映像授業を見ます。全国に1学年8000人以上いる医学部生の、大半が、「同じような映像授業」を見ているわけです。

つまり、「同じような学力レベルのものが」「同じ目標に向けて」「同じ試験目指して」「同じような勉強方法で勉強して」いれば、それは、同じような学生が育つのは当たり前です。こうして、医学部の学生は6年かけて「均質化」されていくわけです。

周りと同じことは悪いことではない

「多様性がない」と言えば、聞こえは悪いですが、逆に言えば「医師としてのある程度の能力は担保されている」ということです。医学部生活6年間によって、全員が、勉強面ではある程度の力を身に着けているということなのです。

「自分」に悩む医学部生

アイデンティティの不安定性

確かに、「医学部の学生の均質化」によって、医師としての力のある程度の担保はされます。しかし、医学部生「個人」としては、均質化ばかりでは困るのです。

自分の周りに自分と同じような(クローンのような)人間ばかりがいたらどう思うでしょう?

  • 「自分とは何か?」
  • 「自分と他者の違いは何か?」
  • 「自分の秀でているところはあるのか?」

人間ですから、周りと自分との比較はします。その中で、自己のアイデンティティに苦しむ人もいます。「医学部全体の均質化」は医療全体としては悪いことでは荷です。ただ、医学部生自身の、アイデンティティやらに影響します。

活路を見出す医学部生

そのように、アイデンティティに悩んだ医学部生は、勉強以外のことを頑張ったり、多少道をそれたりして、「自己」を見つめていきます。自分の感覚としては、学年が上がるごとに、医学部生の均質化が進むとともに、自己の確立も強まっていく人が多いと感じています。