「医学部と留年」両者は深い関係を持っています。「医者の3人に1人は留年経験者」と言われるほど、深い仲にあります。ただ、「医学部生が無能か?」と言われるとそれも違うでしょう。医学部の入試は難易度が高いことが受験界では有名です。(2018年現在。将来はどうなるかは知りませんが)では、そんな医学部でなぜ、留年者が多いか、見ていきましょう。
単純に覚える量は多い
医学は驚くべき速さで進歩しています。インターネットができたおかげで、多くの科学者が一つの方向に向けて努力しましたし、解析技術も上がりました。遺伝子についての理解も増し、「遺伝子から医学をオーダーメイドする」なんて考え方まで出てきています。
このようにして進歩してきた科学、医学は「蓄積されていくもの」なのです。つまり、「学生が覚えなきゃいけない事実」は日に日に増加しています。
「最近の学生はこんなものも分からんのか」と自分の授業中におっしゃる教授がいますが、当たり前です。あなたの時代の医学部生は覚えることが少なく、少ない故に細かいところまで勉強できていたのですから。
「人の体については大体なんでも答えられる」「病気も昔からあるものなら大体知ってる」「お薬もどんなときにどんなものを使うか大体知ってる」状態を作らなきゃいけません。(実際は研修医になってから学ぶことがたくさんあって、学部生時代に覚えることにあまり意味はないとおっしゃる先生もいますが。)
とにかく、覚える量が多いのは当たり前ともいえるでしょう。暗鬼が苦手な学生は苦労し、努力を惜しんだ学生は留年します。
また、医学部特有の「暗記苦手」がいることも一つの要因かもしれません。
医学部には「高校生の時は天才と言われていた」人も多くいます。暗記なんてしなくても、大学入試レベルの問題なら解ける(主に理化・数学)ため暗記に苦労しなかった学生です。高校生までで、覚えられないという経験があまりないので、大量の暗記についていけなかったりします。天才型の学生は努力も嫌うため、暗記量が追い付かなかったりします。
そもそもの授業がおかしい
そんな暗記量の多い医学部ですが、教授達からしたら自分たちの問題ではありません。中には、学生のことを思って勉強しやすい授業資料を使ってくれる教授や、国試対策を全力でやる大学もあります。
ただ、それ以外の大学・教授は「自分がやりたいと思う授業」をやります。学生が勉強しにくくなるような授業をやる人もいます。
例えば、僕の大学では、教授は授業中に自分の研究の話しかしていませんでした。話すのは下手で面白くもなく、まさに「専門バカ」と言われる良い例かと思います。出席は必須なので、一応みんな出席はしますが、誰も聞いていません。かつ、この教授の試験は「試験範囲が教科書一冊丸々」。意味不明です。ただ、やらなきゃ留年なのでやるしかありません。(先生自体は優しかったので、この科目での留年者はほぼ毎年ゼロとも聞きますが、いつ何時先生が怒るか、気が変わるかはわからないので、なんだかんだ言って勉強する人が多いです。)
試験日程がおかしかったりする
この内容についても大学ごとに異なる話かもしれませんが・・・
「暗記量も多い」「授業も分かりにくい」となれば学生も大変です。特に、毎日予習復習すれば何とかなるかもしれませんが、やはり学生ですので、試験直前に勉強することが多いです。(特に留年する人ほど直前まで勉強しない性格だったりする。)
そして、なぜか、「試験日程がおかしい」のです。(ここは本当に学校による)
学期の中盤に期末試験がある科目もあれば、学期末に試験をする科目もあります。(楽器位松にすることが多い。)
学期の中盤に試験をすると、その科目以外の勉強がおかしくなります。毎日予習復習している人でも、1つ何か試験があるときは、その試験の対策をするために、その科目のみを勉強するようになります。そうすると、「試験が近づいてきた科目」の勉強しかしないため、その科目以外の勉強が疎かになり、授業についていけなくなります。
そして、何とか乗り越えた先にあるのは「学期末の試験期間」つまり、試験が一定の期間内に一気に来るのです。そうなるとどうなるのか。
「途中から予習復習をやめ、内容も良くわからなくなり、話を聞かなくなッ田授業の試験対策」をすることになるのです。「試験に受かるためだけ」に「試験対策」の勉強をしたり、徹夜をすることになります。
- 試験対策の身をする・・・試験そのものは乗り越えられるが、毎年試験に出る範囲しか勉強していない学生が出てくる。問題の傾向が変わると再試になる
- 徹夜する・・・徹夜は何も身につかない。一時的記憶は身につくが、試験が終われば一気に忘れる。
このような無駄な勉強になります。(無駄ではないけど・・・)
試験期間以外の(例えば学期の中盤にある)試験で徹夜をすると、次の日の授業にも支障が出ます。ただ、勉強する量が多いのでついつい徹夜してしまう。
生活リズムが崩れ、精神的にもつらく、心が折れると留年への道が開かれてしまうのです。
「やりたかったことと違った」
留年が多いのは特に「2~4」年生です。基礎医学を学んでいる期間です。この時期は「この勉強が将来なんの役に立つんだろう」と思われる勉強ばかりをすることになります。
「よし、医者目指して頑張るぞ」と入学したのに、基礎医学ばかり勉強….(しかも基礎医学の先生は厳しい先生が多かったりする。)
最終的には「俺がやりたいのこんなのじゃなかったな」と思い、勉強が詰まらなくなる人がいます。そういうひとは、上述した通り、徹夜型の勉強ばかりしたりします。
「医学にそもそも興味がない奴が医学部に入るなよ」と言う人もいますが、それは違うでしょう。文学部の人は皆文学に興味があるでしょうか?経済学部の人は皆経済学に興味があるでしょうか?工学部の人は皆工学部の勉強を楽しいと思っているでしょうか?
誰しも、自分のやりたいことは変わったり、興味が変わったりすることはあります。
ただ、やはり学部の特性上、「医学部やめて、他の学部に行く」なんてことは難しいです。どうしても医学部にしがみつかなきゃいけなくなる。(やめて他の道に行く人もいますが。)そして、留年が生まれやすくなってしまうのです。