医の倫理学

医の倫理学10~遺伝医療と遺伝子検査

今回は遺伝子検査等に関する倫理学について学びます。次回、遺伝子改変やデザイナーベイビーについて学びます。

遺伝子検査の分類

遺伝子検査と言っても、「遺伝性疾患」に関する遺伝子検査のみではありません。

  1. 病原体遺伝子検査:病原体の遺伝子検査
  2. ヒト体細胞遺伝子検査:がんの検査などにも遺伝子検査があります。
  3. ヒト遺伝学的検査:遺伝性疾患の有無を調べます。

倫理問題では「3ヒト遺伝学的検査」が問題になります。

遺伝子検査の課題

遺伝情報の特徴

遺伝情報には大きな特徴があります。大きく分けると以下の3つです。

  • 個人情報ではあるが、家族の情報でもあり、家族の問題である。遺伝子は親から子へ子から孫へつながるため、一人の遺伝子の情報は多くの人の個人情報になりうる
  • 発症する前に将来の発症を予測することができる。そこからの差別偏見も生まれうる
  • 将来的に変わることはない。一度遺伝子が分かったら、そこから変化はしない

これらの特徴があるために、ヒト遺伝学的検査には倫理的問題が生じてくるのです。

女優が卵巣摘出

有名な話としては、「アメリカの女優が遺伝性疾患の疑いがあるため、卵巣等を摘出した」というニュースがあります。

彼女の母親は卵巣がんで亡くなっており、それは遺伝子の疾患が原因であったとわかっていました。彼女は卵巣等を摘出しないと、いくらかの割合、高い確率で、がんになります。彼女は、「自分が昔、母に死なれて悲しかったから、子供には同じ悲しみを感じさせないために」卵巣摘出をしました。

ここには多少の問題があります。

たちえば、自分が「遺伝性疾患をもつ」と公表したことで、彼女の子供にも、遺伝性疾患の疑いの目が向けられてしまうということです。

彼女自身は「遺伝性疾患の公表とそれに対する自分の行動」を自分で決断し、公表しました。

ただ、先にも述べました通り、遺伝子の情報は家族の情報でもあります。簡単に公表してよい者かは難しい話です。

病気の恐怖との闘い

遺伝子検査によって、遺伝性疾患があるとわかったとします。将来、自分が何らかの病気になると予測できるのです。遺伝情報は変えられません。「いつか病気になるのだ」と知ることになります。それで対策が立てられるのは良いですが、それと同時に、「自分はいつか遺伝性疾患を発症する」と恐怖を感じることになります。

自分は子供を作ってよいか?

他にも、課題はあります。遺伝性疾患があるとわかった時、「子供を作ろうとしなくなる」事があります。これも前回触れた優生思想に基づいたものですが、「遺伝性疾患を持つ可能性のある子供を産んでも良いのか?」と悩む人もいます。

遺伝カウンセリング

以上のことからわかりますように、遺伝子検査、特に、ヒト遺伝学的検査には多くの課題が絡みます。

そのため、日本では、遺伝カウンセリングが行われています。しっかりと行わなければなりません。遺伝カウンセリングのための専門家もおられます。しっかりヒト遺伝学的検査については、社会がサポートしなければなりません。

次回、遺伝子改変やデザイナーベイビーについて学びます。