医の倫理学

医の倫理学9~出生前診断・優生政策と断種法~「普通の子供」って何?

これまで

  • 生殖補助技術・救世主兄弟など「出産」に関連した内容
  • 本日は人工妊娠中絶などの「産まない選択」

を学びました。

今回は「産む産まないの判断?」の「出生前診断」について学習します。

出生前診断

出生前診断とは

出生前診断とは「赤ちゃんが生まれる前に、赤ちゃんの検査をしよう」というものが元来の意味です。

狭義の意味(一般的にはこちらの意味として使われることが多い)としては出生前遺伝子検査のことを言います。

出生前診断の目的

出生前診断の目的は「妊娠の継続を決めるため」ではありません。本来の目的は以下の3つがあります。

  1. 胎児期に治療を行うことができるものは治療を行える
  2. 分娩方法を決めたり出生後のケアの準備を行う
  3. 妊娠を継続するか否かに関する情報の提供する

「妊娠の継続を決めるため」は目的の一つでしかありません。妊娠中に「子供が病気を抱えて生まれてくる」と分かれば、対策を立てられます。妊娠中に治療は可能かもしれません。そのための出生前診断なのです。

選択的中絶

選択的中絶

ただ、現実として、3番目の「妊娠を継続するか否かに関する情報の提供」が出生前診断の目的として一番多いそうです。「出生前診断をして異常と出た」胎児の親の8割は堕胎を選択しているようです。この様な中絶は「選択的中絶」と言われています。(経済的理由などによる中絶はこれには含まれない)

ここには、「特定の性質を持つ子供が生まれることは望ましくない」とする考え方があります。

つまり、選択的中絶をした夫婦は、「選択的中絶をしなかった夫婦」を部分的に否定してしまうことになってしまいます。

優生政策

このような選択的中絶の考えの根底には優生思想があると言われています。優生思想について学びましょう。

優生思想

優生思想concept of eugenicsとは人間の遺伝的な性質に注目し、人間の生命に優劣を設け、優れた生命を増やし、劣った精鋭を排除しようとする考え方

優生政策

優生政策eugenic policyとは優生思想に基づいて社会に「優れた生命」を増やし、「劣った生命」を社会から減らそうとする政策

  • 積極的政策:優れた生命を増やす
  • 消極的政策:劣った生命を減らす

優生学の歴史

優生学の歴史は古いです。

かつ、最近までその考え方はあって、例えば、ナチスドイツは優生政策として、「ゲルマン民族万歳」と言っていました。

断種法というものもありました。なんらかのハンディキャップを持つ人の生殖能力を奪うことを合法化していたのです。

  • 1907アメリカインディアナ州 断種法
  • 1933ナチスドイツにより不妊手術の合法化
  • 1940日本 国民優生法「遺伝性疾患の予防による優秀な民族素質の保護」優生的理由の不妊手術の合法化

海外では1990年代からこれらへの補償が行われています。日本でも最近やっと補償が行われるようになってきました。

批判

優生思想は科学的には根拠がないところも多いです。「差別的な似非科学」と言われています。

普通の子供とは何か?

「普通の子供」とはなんでしょう。

「普通」については健康とは?正常とは?normalとmal WHO!? こちらの記事で書きました。

「普通」を定義するのは難しいです

。先天性疾患の子供の親が言います。「俺は普通の子供がほしかった!」

普通とは何か?しっかり考える必要があります。

課題

出生前診断には色々な課題があります。

出生前寝台で、胎児が異常と分かった場合、そこで産むと選択したとしましょう。

そこで「夫婦で決めたことだから責任もって育てろよ」とはいえません。社会が夫婦を支えなければなりません。

「自分たちだけで支えられないなら、産むなよ」と言う人もいるでしょう。

それは倫理に反しています。

ただ、そういう人がいてしまうことも事実です。社会には精神的成長が求められます。(偏見をなくすなど)

 まとめ

今回は出生前診断について学びました。

ただ、出生前診断は「優生思想」に影響を受けた、悪い利用のされ方になりがちなので、病院ではあまり勧めてはいません。(一定の条件を満たして、かつ、夫婦からの希望がある場合には認めている)

医の倫理学8~中絶」にも絡む内容です。ぜひいろいろと考えてみてください。