医学生向け

(実習開始前必見)医学部生が臨床実習時に持つべき・気をつけるべき態度(あいさつ)

真面目にやっているのに評価されない学生

大学病院などで臨床実習をしていると、たまにこういう話が挙がります。

  • 指導医「彼はやる気が無いのかね。」
  • 研修医「あの子、すこし消極的だね。指導医の先生、心配してたから、もう少し頑張るように伝えておいてよ」

このようなコメントを、受ける学生がいます。ただ、そのようなコメントを受ける学生は必ずしも全員が、「不真面目」だったり「やる気が無い」わけではないのです。(もちろん、実習にやる気を見せていない、不真面目な学生も中にはいますが..)

このように、「真面目にやっているのに」「医者からは評価されない」というのは、「端から見たら、学生の頑張りを理解してもらえてない」から起きてしまうのです。その原因は基本的に、「実習に臨む際の態度の問題」です。

今回は、、病院実習について、

  • こういう態度で臨んでいけば、好評かを得られるよ
  • こういうメンタルでいけば自分も学びを深められるよ

という「実習姿勢」を紹介します。

まずは元気よく爽やかに、堂々と

元気よく挨拶しておけば、なんとかなる

まず、「挨拶」。これが基本となります。ただ、実習当初、「挨拶」ができる学生はなかなかいません。理由としては以下のようなものが挙げられます。

  • 小学校の時から、「挨拶は大事」と言われて育ってきていても、大学生になると、なかなか元気よく挨拶する機会はない(面倒くさい)。
  • 忙しそうにしている医療従事者に、こちらから挨拶していいのか分からない(挨拶のタイミングもつかめない)。
  • 「看護学部の学生が挨拶しても無視された」とか聞く。自分も無視されるくらいなら挨拶なんてしなくて良い気がする。

挙げてしまえば枚挙にいとまがないほど、あいさつをしなくなる理由があります。特に大学病院では、一般的に、「挨拶」が蔑ろにされていることも多いです。(先生同士が廊下ですれ違っても、挨拶も会釈もなく、無言だったり。)そのような環境にいて、しっかり挨拶をすることもかなり困難に感じるでしょう。病院にまだ慣れていない学生ならなおさらのことです。「いや、あいさつしにくいな」と思う気持ちはよく分かります。

研究でも、「看護師の役職が下の立場の人ほど、あいさつは、自分から行ないにくいこと」が示されています。医学部生なんて、更に下の立場ですから、挨拶しにくいことは明確です。

1.師長・副師長はリーダー・メンバーよりも、あいさつは相手の存在を認める行動であり、あいさつをすることで仕事の能率が上がると感じ、自分からあいさつをするよう心がけていた。
2.リーダーやメンバーは師長・副師長よりも、あいさつをストレスと感じ、勇気がいる行動であると捉えていた。

看護師のあいさつに対する意識と行動

ただ、それでも尚、挨拶はした方が良いです。なるべく多くの人(医者のみならず、廊下ですれ違うような人・患者さん・コメディカル、清掃員すべて)に、挨拶はした方が良いです。挨拶をする理由は、今更書くまでもないですが、下世話な話も含めて一応以下に書きだしてみましょう。

  • 挨拶は人間関係の構築に非常に有用。(患者さんと仲良くなりやすい。)
  • 挨拶されて嫌な人はいない。(挨拶をしっかりするだけで、実習評価が高まることは、普通によくある。実習評価なんて主観的で曖昧な評価だからこそ、挨拶のような基本的な行為は大事。)
  • 挨拶することで「俺はここにいる」アピールになる。(一度、実習時に集合場所を間違えた時があったが、当日朝に指導医に廊下で挨拶していたので大きなトラブルにならなかった。)
  • 「挨拶するやつ」認定されると、向こうから挨拶してくれる。(看護師さんなどは「挨拶しない人」のイメージがあるが、こちらから挨拶しておけば、いつか向こうから返してくれる。皆、内心では挨拶を渇望しているのかも?)

挨拶をする理由を挙げてしまえば、枚挙にいとまがありません。(そもそも、学生風情が、病院で勉強させてもらっている身のくせに、挨拶を怠ることは言語道断でしょう。)。

いつも大きな声で挨拶する必要ありません。(静かにしなきゃ行けないタイミングもあるでしょう。)ただ、病院という閉塞感ある空間で、挨拶は大きなエネルギーになることは、間違いありません。

堂々としろ!(分からないときは、分からないと言え)

実習中には、先生から「○○って分かる?」などの質問を受けるときがあります。ここで反応としては、以下の4パターンがありそうです。

  1. 「分かります。~~~です。」
  2. 「分かりません。~~でしょうか?」
  3. 「分かりません!!」
  4. 「(自信ないから無言)」

①のパターンになる学生は「優秀」で「やる気があって」「すばらしい」学生となります。何の問題も無く、実習を楽しめそうです。

ただ、冒頭で書いた、「本人としては真面目にやっているつもりなのに、評価されない学生」特に控えめな性格の人が多い実習班では、④のパターンになることが多いです。

  • 「(うーん、分からない、頭の良い班員のあいつが言ってくれるかな)
  • 「(俺が答え言っていいのかな。他にも誰か言いたい人いないかな)」

このような「間」ができてしまうのです。時に、誰も分からないような難しい質問が来たときには、「無言時間」が生じてしまうことが多いです。

この「無言時間」教えている側(先生)にとっても、教わる側(学生)にとっても、無駄な時間になります。分からない物は分からないのだから、考えても仕方がありません。元気よく、即答で「分かりません。」と言えば良いのです。(パターン③)もしくは、「ちょっと自信ないけど、、」と思うときは、パターン②のように、少し前置きをつけてから、堂々と発言すれば良いのです。

「分かりません」と元気よく言うだけでも十分だと思います。パターン③の受け答えを嫉妬期に、先生側の反応は、主に以下の3通りになります。

  • 「君、元気いいねえ。僕先生のこと好きだなあ。」(主に外科系に多い反応。そのまま飲み会まで連れて行ってもらえるかも。)
  • 「(そのまま解説する)」(この場合、先生は、「そもそも学生は何も分かっていない」と思って指導しているから、分かっていなくて問題ない。言われたことを勉強すればとりあえず良い。)
  • 「君、もう少し悩んでから発言すれば?」(内科系の、陰湿そうな医者に、まれに見られる。この手の人の質問は、専門的な知識で答えられるわけない質問も多いから、嫌みは無視して良い。)
  • 「何が分からないのかな?」(教育熱心な先生に多い。一緒に分からないことを考えながら、勉強していけば良い。)

なんとなく「分かりません」というのが嫌な人は、思いついたことをとりあえず言えば良いです(パターン②)。
とにかく、一番大事なのは「無駄な時間」を作らないことです。忙しい医療従事者・特に大学病院勤務の医者が、わざわざ学生教育の時間を設けているわけです。無言時間が一番もったいないです。

同様の理由で「返事」もしておくべき

同様の理由にして、何か言われたときには、返事もしておいた方が良いでしょう。

「自分も医療従事者として」

「できること」から参加していく

以上、「あいさつ」と「思い切りの良さ」を身につけたら、次は、「できること」から実習に参加していくと自分のためになります。例えば、「学生でもできる仕事」は以下のような物があります。

  • (病棟・特に回診時)回診の列の先頭に立って、患者さんのカーテンを開けて、「おはようございます(こんにちは)。回診です。」と言う。
    (そのまま先生に引き継ぐ。自分は回診時に先生が何を見ているか・聞いているか・患者さんの視診や、患者さんにつながれている管/輸液などを確認する)
  • (手術室)手術記録のカメラの操作・手術ライトの位置調整や明暗操作・外回り看護師さんの手伝い・患者さんのベッド移動の手伝い

これらの行為は「やろうとすれば、誰でもできる仕事」になります。そして、このような仕事は、医者になってからでも普通に行なう行為です。だからこそ、学生のうちから積極的に参加して、できるようになっておいて損はありません。

やっていくうちに、できることがかなり増える

「そんな『誰にでもできる仕事』を学生のうちからやらなくてもいいじゃないか」と思う人は多いでしょう。が、これらの行為は、以外とやってみると難しかったり、奥が深かったりします。

  • 例えば、手術後、患者さんが手術台からベッドに移動するときのことを考えてみましょう。大体どこの病院でも、麻酔科医の「イチ、ニ、サン」の声に合わせて、移動させることが多いです。このとき、どのように移動させれば良いでしょうか?こんな知識は、国家試験のQuestionBankには載っていません。
    答えとしては、僕が習った範囲では「優しく・強く・ゆっくりと」を心がけろと習いました。(なるべく、患者さんを「面」で捉える=指の力で持つので無く、手のひらで大きく包み込むように体を支えるとよい、など。)
  • 他にも例えば、術後、混乱して暴れる患者さんがいたら、どう対応すれば良いでしょうか?(これまたQBには載っていない。)
    答えとしては、「なるべく関節をロックする(関節をおさえつける)」。(術後、混乱して暴れる患者はいるため、麻酔が開けるとき、看護師は常にベッドサイドにいる。)
  • 余談になりますが、看護師には女性が多いです。また、医者は体を鍛えていない人も多いです。時には、手術室で、男子医学生が一番力持ちだったりします。術後、強く暴れている患者さんを落ち着かせるのに学生はとても優秀な力となります。そこで貢献すれば、看護師さんにとてつもなく感謝されて幸せです。次の日以降、手術のガウン着る時、多少ミスっても優しく許してくれたりします。
  • 術後、黒い酸素ボンベからの酸素吸入を患者さんにすることを考えましょう。酸素ボンベの栓の開け方にも、「間違えてはいけない順番」があるのです。「酸素○Lで投与して」と言われて、スッとできる学生はかっこいいです。

このように「臨床でしか身につけることができない知識」は確実に存在します。それは、国家試験に必要な知識とは限りませんが、必ず必要になる知識です。
また、そのような「臨床でしか身につかない」知識は、地道な知識である(が、やらないと分からない)物が多いです。学生のうちからこのような知識を身につけておいて損はありません。

まとめ

以上のスタンス・実習態度をとっておけば、実習はより実りある物になるはずです。

少し努力するだけで、

  • 患者さんからは「元気の良い若者だなあ」と感じてもらえ、
  • 先生には、「あいつは素直で真面目だなあ」と思われ、
    (実習多少サボっても、怒られなくなったり?楽をしたいなら必死にやれ。)
  • コメディカルからは「あいつ役に立つから優しくしてやろう」と感じてもらえ、

得しかありません。

さらに有意義にするには、予習をしておくことが良いでしょう→面倒・退屈に感じる「病院実習」を有意義にする方法

学生行為の研究もされている

よく言われる実習の不真面目行為とは

早期臨床体験実習における医学生の不適切行動に対する
フィードバックの効果

実は、上図の通り、「実習時の態度の悪さ」が研究されていたりもします。「積極性」や「コミュニケーション」の分野は、基本的に「あいさつ」「はきはきこたえる」「できることをやろうとする」の3点を守っておけば問題ないでしょう。

基本的学習態度の欠如「遅刻・居眠り・忘れ物・身だしなみ・言葉遣い・学生同士でたむろ」これらは、やらないのが普通ですし詳細には書きません。

学生実習の態度が将来の医師生活に影響を与える?

2005年アメリカで「臨床実習における態度」と「医師のプロフェッショナリズム」に関するコホート研究が行なわれました。(→”Performance during Internal Medicine Residency Training and Subsequent Disciplinary Action by State Licensing Boards“)

その結果、指導医から「無責任」あるいは「自己改善能力が低い」と評価された学生は、卒業後に懲戒処分を受ける確率が3倍も高かったことが報告されています。

  • 実習を真面目にやったから懲戒処分を受けなかったのか
  • 懲戒処分を受けるような人は実習も真面目にやらないのか

この因果関係は不明ですが、真面目に臨床実習はやるべきなのは当然と感じられます。